業界に新たな道?農業技術10大ニュースに選ばれた「みちしずく」とは

みちしずく(農研機構提供)

 農水省が発表した2022年の「農業技術10大ニュース」にサツマイモ関連のニュースが1件、ランクインした。選ばれたニュースとは、「新たな道を切り開く『みちしずく』-基腐病に強く、多収の焼酎・でんぷん原料用かんしょ新品種を育成」だ。新たに育成された品種「みちしずく」とは―。【さつまいもニュースONLINE編集部】

 農業技術10大ニュースは、農業関係専門紙など30社が加盟する記者クラブ「農業技術クラブ」が選定に携わっている。1年間で新聞記事として取り上げられた産官学などの農林水産研究成果のうち、内容に優れ、社会的関心が高いと考えられるニュースについて、同クラブの加盟会員の投票によって10本選んでいる。

 サツマイモ関連で選ばれた「みちしずく」は、国立の研究機関「農研機構」(本部・茨城県つくば市)が育成した、焼酎やでんぷん原料向けのサツマイモの新品種だ。

 近年、全国的に多くのサツマイモ農家を悩ませる土壌伝染性の病害「サツマイモ基腐(もとぐされ)病」に対し、抵抗性が強いことが大きな特長。

 サツマイモ基腐病はつるを枯らし、イモを腐らせる病気で、2018年秋に国内初確認されて以来、全国的に被害が拡大し、国や地方自治体などが病害対策を予算化するなどし対応にあたっている。

 昨年末には九州地区の焼酎大手が、基腐病の影響からサツマイモの収穫量減少が響き、主力製品の芋焼酎の一部販売休止を発表するなどの事態も起きている。

 「新たな道を切り開く」として、「みちしずく」が選ばれた大きな背景の一つには、そうしたサツマイモ業界の苦境があるともいえる。

■収穫量も多く見込める「新たな期待」

 農研機構の過去の発表によると、みちしずくは、焼酎原料用の主力品種で知られる「コガネセンガン」と焼酎にした際の香りや味などの酒質が似ている上、コガネセンガンよりも基腐病への抵抗性に優れ、収穫量も多く見込めるという。

みちしずくとコガネセンガンの比較表(農研機構提供)

 また、でんぷん原料用としても収量が多く見込め、でんぷんの白さを表す規格「でんぷん白度」も高いことから品質面でも有望とされる。

 サツマイモ由来のでんぷんは一般的に清涼飲料水に使われる果糖ブドウ糖液糖などの甘味料、菓子や麺類などの食品などに活用されている。

■普及に向け、種芋の増殖にも注力

 同機構はみちしずくの導入によって期待される効果として、「みちしずくの普及により、基腐病による被害が軽減し、生産者が安心して栽培でき、焼酎原料用サツマイモの安定確保が期待される」としている。

 現在、同機構では、南九州のサツマイモ産地への普及に向けて種芋の増殖に取り組むなどしているという。今後の普及・拡大に大きな期待がかかっている。