「国民食のサツマイモを守る」基腐病対策で産学連携のコンソーシアム


全国で多くの生産・加工業者などを悩ませている土壌伝染性の病害「サツマイモ基腐(もとぐされ)病」の対策に向けた知見を集める産学連携コンソーシアム「みんなのサツマイモを守るプロジェクト-Save The Sweet Potato-」がこのほど設立された。立ち上げたのは、飼肥原料、農業資材などを扱う卸売商社「welzo(旧・ニチリウ永瀬」(ウェルゾ、福岡市博多区)。南九州の基幹農作物の一つとして重要な位置を占めるサツマイモを巡り、分野を横断してスクラムを組み、効果的な「防除法」の研究や発信なども行っていきたい考えだ。【さつまいもニュースONLINE編集部】


被害の大きい南九州、産業に打撃

サツマイモ基腐病はつるを枯らし、イモを腐らせる病気で、2018年秋に国内初確認されて以来、全国的に被害が拡大。国や地方自治体などが病害対策を予算化するなどし対応にあたってきている。南九州での被害が大きいとされ、サツマイモを巡る産業に打撃を与えている。


welzoが生産者にヒアリングしたところ、基腐病の被害状況として、一般的な対処法とされる殺菌剤が効かず、一度、発症すると被害が拡大してしまう傾向があるという。また、感染力の強さも特徴で、一つのほ場で発症すると、近隣のほ場にも拡大し、被害を抑え込むことが困難という。

生産者がそれぞれ試行錯誤して対策を講じるが、基腐病への抵抗性の強い品種の切り替えなどのほかに、効果的な防除法や解決策は見つかっていないとされている。

コンソーシアムが目指す三つの取り組み

そうした背景の中で、今回、立ち上げられたコンソーシアムは、三つの取り組みを柱に活動を進めていくという。

一つ目が、生産者や酒造会社、大学など分野を横断した知見の集約だ。「基腐病に対する情報を共有し、サツマイモに関わるすべての人がつながることで、本コンソーシアムが基腐病の知恵袋となる」とwelzoは説明している。

二つ目が、防除法の研究と発信。基腐病は国、地方自治体を含む官民さまざまな機関で対策などの研究や検討が行われているが、効果的な防除法はないとされており、コンソーシアムを介し、生産者、焼酎メーカー、大学などが連携し、防除法を研究・発信していくという。

三つ目が、防除法にとどまらず、基腐病に抵抗性の強い品種の開発も視野に入れた研究だ。大学や、農業と技術を組み合わせた「アグリテック」のベンチャー企業などと組み、知見を集めていく。

九大や酒造メーカー、生産者など賛同

同社によると、活動には九州大学をはじめ、薩摩酒造(鹿児島県枕崎市)や小鹿酒造(同県鹿屋市)といった芋焼酎の酒造メーカー、鹿児島県内の生産者、東京大学発アグリテックベンチャーの「CULTA」(東京都渋谷区)なども活動に賛同しているといい、今後、取り組みを深めていく考えだ。

コンソーシアム側は「国民食であるサツマイモを守りたいという皆さまにぜひ参画してもらい、一刻でも早くこの状況を打破できるように出来ることは何でも貢献していきたいと思っています」などとコメントしている。