基腐病に強い抵抗性を備える新品種「べにひなた」開発、農研機構

新品種の「べにひなた」(農研機構提供)

国立の研究機関「農研機構」(本部・茨城県つくば市)はこのほど、土壌伝染性の病害「サツマイモ基腐病」への強い抵抗性を備えた青果用サツマイモの品種「べにひなた」を開発した、と発表した。ホクホクとした肉質でやさしい甘さがあるといい、収量は、「べにはるか」並みに多収という。南九州を中心に同病の被害を受けている地域の安定生産に向け、「新たな一手」(同機構)として普及に期待がかかる。【さつまいもニュースONLINE編集部】

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被害拡大受け、育成に
早期着手

サツマイモ基腐病はつるを枯らし、イモを腐らせる病気で、2018年秋に国内初確認されて以来、全国的に被害が拡大し、国や地方自治体なども病害対策を予算化するなどし対応にあたっている。

そうした中、同機構では同病の被害拡大を受けて早期に品種育成に着手。育成中の系統や遺伝資源として維持している系統について、同病に汚染されたほ場で抵抗性を評価していった。

通常、一般的な品種育成は10年以上を要するところ、異例ともいえる2年後の2020年度には、同病への強い抵抗性を有する「べにひなた(系統名=九州201号)」を見出したという。

べにひなたは蒸した場合、甘みがあることに加え、皮の色や形状などの見た目の品質や、収量性に優れていたことから、基腐病への抵抗性や地域への適応性など調査を続け、2023年2月に品種登録出願を実施したという。

新品種「べにひなた」の特徴とは

では、べにひなたの特徴はどういったものか。

同機構によると、べにひなたは「多収で良食味」(同機構)の「べにはるか」を母、でんぷんの歩留まりの高い「九系09178-1」を父とする交配の組み合わせから選抜。

べにひなたとべにはるか、高系14号(農研機構提供)

基腐病への抵抗性は「強」という判断。ただし、「全く罹病しないわけではないため、種イモには健全ほ場から採取した健全イモを用いたうえで、基本的な防除対策を実施する必要があります」と同機構は説明する。

青果用品種の基腐病に対する抵抗性検定結果・令和3年(農研機構提供)

肉質は「中」の判断で「高系14号」(編集部注:西日本などで多く作られる)のようなほくほくとした食感や舌触りで、やさしい甘さがあるという。甘みを巡っては、ブリックスと呼ばれる糖度計の測定値で、甘みの強いべにはるかとあっさりとした甘みの高系14号の中間の値を示したとのこと。

また、貯蔵しても肉質が変化しにくく、加工原料としての安定性も有することから、同機構は「食品加工用途での利用にも適します」と述べる。

「生産者が安心して栽培できるように」

今後については、基腐病に対して強い抵抗性を有する青果用サツマイモとして、被害が懸念されている宮崎、鹿児島の両県での普及を見込む。

同機構は「べにひなたの普及で、基腐病による被害が軽減し、生産者が安心して栽培できるようになり、南九州における青果用サツマイモの安定生産、さらには全国の青果用産地での生産振興につながることが期待されます」とコメント。

研究担当者は「べにひなたが、基腐病に強い抵抗性を持つという強みを発揮し、青果用サツマイモの関係者の皆様にとって基腐病克服へと取り組み続けるための支えになるようにと願っています」としている。

同機構では、さらに基腐病への抵抗性の高い青果用品種の開発にも引き続き、取り組んでいく考えだ。


農研機構によると、べにひなたの名称には、基腐病の克服に取り組む関係者の方々が「明るく前向きな気持ちになれますように」という願いを込めたそうです。ホクホクとした食感でやさしい甘さが特徴といい、けんぴやチップスなどにも適しているそう。べにひなたのアイテムに出会う日を待つとともに、基腐病の影響でおイモの市場が縮小してしまわないように、目の前のおイモを一人一人が、楽しく、無理なく買い支え、大事に味わっていくことが必要なのではないかと思っています。