霧島酒造、基腐病の拡大防止で新たに種苗生産施設 研究開発も注力


近年、多くのサツマイモ農家を悩ませている土壌伝染性の病害「サツマイモ基腐(もとぐされ)病」の拡大防止につなげるため、焼酎大手の霧島酒造(宮崎県都城市)はこのほど、サツマイモの種苗を生産する新たな施設を9月から稼働させることを明らかにした。新たな施設は、同社の志比田工場(同)近くで着工済み。総工費約14億円に上るプロジェクトで、健全なサツマイモ苗の育成・供給、基腐病対策の研究開発を行う施設として機能させたい考えだ。【さつまいもニュースONLINE編集部】

新たな施設の建設予定地

「甘藷種苗生産施設」と仮称する施設で、同市志比田町で1月から着工している。敷地面積は約1万7500平方メートルで、鉄骨造り2階建ての管理研究棟と育苗ハウスを建てる計画。生産能力としては、切り苗で最大200万本、ポット苗で最大9万本を目指す。

基腐病を巡っては、同社においても、芋焼酎の原料となるサツマイモの確保難に見舞われ、一部商品の販売休止を余儀なくされるなどの事態が生じている。

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そうした中、同社ではこれまでも基腐病の克服に向け、生産農家と基腐病菌の防除対策で協力してきたが、さらに取り組みを充実させるため、今回の施設の建設に踏み切ったという。

■施設が果たす3つの取り組みとは

施設では、その果たすべき役割として3つの取り組みを掲げている。

1つ目が、健全な苗の育成・供給だ。種苗段階における基腐病の拡大を防ぐことに加え、広く病害発生リスクの少ない健全な苗の育成・供給も行っていく考えだ。

2つ目が、基腐病の抵抗性が高い品種の普及推進だ。主力品種「コガネセンガン」よりも抵抗性が高く、同様の酒質・品質維持できると見込まれている「みちしずく」の導入などを進めるという。

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3つ目が、サツマイモの研究開発で、安定確保と新たな価値創出を目的に品種改良を含め取り組んでいく計画だ。

■生産農家と共に「難局乗り越えたい」

施設の完成イメージ

同社の江夏順行社長は「組織の持続可能性を見つめ直した結果、事業基盤ともいえるサツマイモづくりから見直す必要があると考え、基腐病の抜本的対策とされている健全な苗づくりから取り組んでいくことにした」などとコメントを発表。

新たな施設の稼働などの取り組みを通じ、「運命共同体ともいうべき生産農家の皆様と一致団結して、この難局を乗り越えたい」としている。